坂道では自転車を降りて
そのとき気付いた。っていうか、なんでこんな簡単なことに気付かなかったんだ。脚本を書いたのは俺じゃないか。書き直すのなんか簡単だ。いや、簡単ではないけど、上手く回せば役者の1人くらい減らせないわけないではないか。
「どうしたの?」
少し前を歩いていた彼女が、立ち止まった俺に気付いて戻って来た。
「ん。。。これ持って。傘は、俺が持つ。」
彼女の傘を取り上げて、代わりに俺の鞄を持たせた。結構重たいだろうけど持てない程ではないはずだ。二つの鞄を両手に持った彼女は、荷物を運ばされる奴隷のようにヨロヨロした。これで彼女は逃げられない。俺は傘をさしかけながらよろける彼女を抱き寄せた。
俺が抱き寄せるといつも、彼女は電流が流れたみたいにビクッとして固まる。でもしばらくすると力を抜いて身を預けて来る。今日も彼女は驚いて固まってしまったけど、嫌がってるわけじゃない。傘で作られた狭くて寒い部屋の中は隙間だらけで、冷たい霧雨が吹き込んでくる。でもそんなの気にならない。俺の腕の中には確かに温かな彼女がいる。俺の頬が火照って、熱くなってきた。自分の顔から険が抜けて、静かに笑っているのが、自分で分かる。彼女が気付いて微笑みを返す。
「髪、濡れてる。おでこも。」
少し濡れて乱れた髪、しっとりと湿った肌。手で彼女の前髪をとかし、こめかみの髪を耳にかける。
「多恵が好きなんだ。」
「うん。」
「なんで、こんなに、ドキドキするのか、自分でもよくわからないんだけど。。」
「うん。」
柔らかな身体を抱き締めながら、長い髪を梳き、彼女のこめかみに唇をよせると、彼女が気持ち良さそうに顎を上げて目を閉じた。ぷるんとした唇が軽く開いてため息が漏れる。この唇。白い首筋。これって、そういう事なのか?
「どうしたの?」
少し前を歩いていた彼女が、立ち止まった俺に気付いて戻って来た。
「ん。。。これ持って。傘は、俺が持つ。」
彼女の傘を取り上げて、代わりに俺の鞄を持たせた。結構重たいだろうけど持てない程ではないはずだ。二つの鞄を両手に持った彼女は、荷物を運ばされる奴隷のようにヨロヨロした。これで彼女は逃げられない。俺は傘をさしかけながらよろける彼女を抱き寄せた。
俺が抱き寄せるといつも、彼女は電流が流れたみたいにビクッとして固まる。でもしばらくすると力を抜いて身を預けて来る。今日も彼女は驚いて固まってしまったけど、嫌がってるわけじゃない。傘で作られた狭くて寒い部屋の中は隙間だらけで、冷たい霧雨が吹き込んでくる。でもそんなの気にならない。俺の腕の中には確かに温かな彼女がいる。俺の頬が火照って、熱くなってきた。自分の顔から険が抜けて、静かに笑っているのが、自分で分かる。彼女が気付いて微笑みを返す。
「髪、濡れてる。おでこも。」
少し濡れて乱れた髪、しっとりと湿った肌。手で彼女の前髪をとかし、こめかみの髪を耳にかける。
「多恵が好きなんだ。」
「うん。」
「なんで、こんなに、ドキドキするのか、自分でもよくわからないんだけど。。」
「うん。」
柔らかな身体を抱き締めながら、長い髪を梳き、彼女のこめかみに唇をよせると、彼女が気持ち良さそうに顎を上げて目を閉じた。ぷるんとした唇が軽く開いてため息が漏れる。この唇。白い首筋。これって、そういう事なのか?