坂道では自転車を降りて
 次の日の昼休み、部室へ行くとまた美波が来ていた。弁当箱を持参している。
「いつも一緒に食べている子がお休みで。一緒に食べていい?」
教室で何かあったのだろうか?女子の人間関係は複雑で陰湿だと聞く。

「どうぞ。」
いつもなら食べながら書くのだが、今日はとりあえず弁当を先に食べる事にした。

「台本、一応、出来たんでしょ?」
「いや、まだ。先輩にはラフを見せたんだけど、なんか、納得いかなくて。」
「どんな話なの?」
「どんなって、ひと言ではとても。」
「女性の役ある?」
自分の役があるかどうかが気になるらしい。もう1本、春の公演の有力な候補になっている脚本は女性の登場人物が少なく、引退公演となる2年生の事を考えると、1年の彼女が役をとれる可能性は低かった。

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