坂道では自転車を降りて
「作業 押してるんでしょ? どうしちゃったの?」
「。。。。。」
答えない。。私には言えないんだ。どうして役に立てないんだろ。
「まあいいや。私戻るね。電話してあげて。」
戻ろうとしたら、
「待って。」
泣きそうな顔でこっちを見ている。こんな川村くん初めてだ。
「何?」
できるだけ優しく笑いかける。教えて、君の役に立ちたい。
「あ。。。。」
何か言おうとして、ためらっている。すがるような目が、本当に彼らしくない。
「うん。」
待つよ。だから話してみて。
「ごめん、なんでもない。」
「。。。。。何もできないかもしれないけど、話してくれたら、聞くよ?」
「ちがうんだ。もういい。」

川村くんは高橋くんに電話した。私はその場に残り様子を見守った。高橋くんはもう学校を出たようだった。
「俺も戻るよ。先に戻ってて。」
川村くんは部屋を片付け始めた。

 といっても、CDとストップウォッチ、台本とノート程度で、大した片付けはない。私が待っているのをみると、川村くんは暗幕を閉めて欲しいといった。暗幕は普段、閉まっているらしい。私は窓にかかる暗幕を閉めた。電灯のついていない部屋で最後の暗幕を閉めると夕闇だった教室が真っ暗になった。
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