坂道では自転車を降りて
「あ、ごめん。」
もう一度カーテンを開け、川村くんの片付けが終わるのを待った。片付け終わると、彼はドアを開けて待つ。
「忘れ物ない?」
「おう。」
暗幕を閉めて明かりの漏れるドアの方へ向かう。

ドアの近くまで来たとき、突然ドアが閉まり部屋が真っ暗になった。
「何?ちょっと暗い。」
慌てて、ドアの方へ歩くと川村くんがいた。思わず腕にしがみつく。

「なんでドア閉まったの?」
川村くんは震えていた。
「川村くん、大丈夫?怖いの?」
「んなわけないだろ。」
いきなり、きつく抱きしめられた。ちょっと苦しい。
「ちょっと、苦しいよ。」
「。。。。。ばかだな。」
「なにそれ?」

 何か話してくれてるのかもしれない。しばらくそのままの体勢で動かずにいた。次第に目が慣れてくる。

「川村くん?」
「俺」
「うん?」
「俺、ずっと好きな子がいたみたいなんだ。」
「うん。」
いたみたいって、どういう意味だろ?
「その子が、、。。最近、男と付き合い始めて。」
「うん。」
「どんどん、、綺麗になってくんだ。まるで花がほころぶみたいに。」

川村くんは深いため息をついて、また私を抱きしめる腕に力を込めた。
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