坂道では自転車を降りて
「あー、女は2人と、あと、男でも女でも良いのが2人。今のところね。」
 そのまま脚本の話を続けながら、弁当を食べる。女子と2人だけで部室で弁当を食べているなんて、なんだか変な感じだ。

 さっさと食べ終わるとパソコンを開いて、本を書き始めたが、ちょこちょこと話しかけられるので、どうも集中できない。このまま彼女を1人にするのも少し気の毒だったが、俺にだって他人に構っている余裕はない。適当に言い訳をして、席を外した。

 図書室へ行くと、大野多恵がいた。委員の子と雑談をしていた。こんなところにも出入りしているのか。俺の顔を見ると、二人は話をやめて自分の仕事に戻ったようすだった。図書室で雑談とはと思ったが、見ると図書室には他に誰もいなかったようだ。
 一応ここは進学校のはずだが、いつの時代かわからない古い読み物以外には、調べものしか用途の無さそうな古ぼけた図書室は、ごく一部の生徒を除いて、ほとんど出入りの無い場所だった。委員の子は司書室へ入り、昼休みの図書室は俺と彼女だけになった。彼女は雑誌を見ながらスケッチブックに絵を描きはじめた。
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