坂道では自転車を降りて
 その日も雨が降っていた。舞台稽古を終えて部室に帰ると、彼女と一年の織田が2人で作業をしていた。裏の一年は全部で4人いた筈だが、他の奴らはどうしたんだろう。2人で作業をしたからって、即、何が起こる訳でもないはずだが、俺はざわついた気持ちを抑えられなかった。
 作業に没頭している彼女。先に気付いた織田が、何故だか俺を睨んでいるような気がする。なんだよ。なんか俺に文句あるのか?

 バラバラと役者達が解散し、しばらくすると裏方の3人も戻って来た。体育館で照明と音響の作業をしていたらしい。もう少しで終わりそうだったので、駅で彼女を待ちぶせて、一緒に帰る。

「前にも言った筈だけどさ。君さ、他の男と二人きりになるなよ。」
「そんなの、部活してたら無理だよ。」
「だったら、部活辞めろ。」
我ながらあきれる無理難題だ。

「それに、美術部でだって、先生だって、いくらでも男の人はいるんだよ。」
「だったら、せめてドアを開けておけよ。」
「だって、寒いし。。それに、あのときも、最初は空いてたよ。」
「あんな人気のないところ、ドアが開いてても同じだろ。」
「だったら、どうしようもないじゃん。」

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