坂道では自転車を降りて
これで、すぐになんとかなる訳でもないが、少しはましになるだろう。しかし、今、言いかけた言葉が気になった。

「あのとき、何?」
「え?」
「さっき、それにあのときって、何かいいかけた。」
「そんなこと言ったかな?」
彼女は電車を待つそぶりで、視線を外した。


「言った。『いままで何でもなかったから。それにあのとき』って。
「もう忘れちゃったよ。」
引きつり笑いしてるの、バレバレだぞ。俺は面白くなって、彼女をからかい始めた。内容なんてもうどうでもよくなっていた。

「その顔は忘れてない。ちゃんと言えよ。気になるだろ。」
「言わない。言いたくない。」
とうとう開き直ったか。
「なんだよ。それ。」
笑いながら彼女をからかう。俺はここで止めておくべきだったのに。

「だって、言ったら。。。」
「お前、隠し事下手だな。笑」
「いつの間に私”お前”になったの?」
「はぐらかすなよ、で、なんなの?」
「だから言わないって。」
「言えよ。」
「言ったら、多分、終わりだよ。良いの?」
終わり?

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