坂道では自転車を降りて
 終わりって、俺たちが終わりってこと?そういうことがあったの?
「もう、聞かないで。」
 俺が黙ったので、彼女はホッとして息を吐いた。君、今、完全に間違えたよ。分かってる?
「それ、言っちゃったら、既に終わってない?」

 自分がすごい目つきで彼女を睨んでいることがわかる。彼女は自分の不手際に気付き、動揺しはじめた。

 他の乗客が俺の後ろに並んだ。そろそろ電車が来るだろう。電車を待つ間、電車に乗ってからも、俺は彼女から視線を外さなかった。彼女は俯いてガタガタ震えている。
 バスに乗り換える。バスの中でも彼女は無言だった。バス停につき、逃げるように降りる彼女を追いかけて、俺も一緒に降りた。

「おい。」
我ながらドスの利いた怖い声がでるもんだ。傘をさす間もなく逃げる彼女の腕を捕まえ立ち止まらせる。強く握りすぎたのか、彼女は顔をしかめた。霧雨が2人の髪を濡らした。

「何が終わりなんだよ。あいつと何があった。」
大声で叫ばず、静かに言えた自分が不思議なくらいだった。俯いて黙っていた彼女は突然こちらを向き、挑戦的な目で睨み返してきた。ふぅっと深呼吸をして一気に話した。

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