坂道では自転車を降りて
「多恵は、本当は川村が好きなの?」
「うん。。。ごめんなさい。」

あまりにあっけなく言われ、俺はへなへなと道路に座り込んだ。
「大丈夫?」
彼女が顔を覗き込んで来た。
「いや、、あー。分かった。もういい。」
「ごめんね。」

寒そうにガウンの前を合わせ、白い息を吐きながら、彼女はなんだかホッとした顔をしていた。
「いや、いいんだ。俺こそこんな夜中にごめん。もう帰るよ。」
立ち上がりながらなんとか言うと、
「うん。おやすみ。」
笑顔を見せた彼女に無性に腹が立った。

「。。。。」
「?」
 彼女を見つめたまま、なかなか立ち去らない俺に、彼女は笑顔を崩さないようにしながら、次第に怪訝な顔になり、じりじりと後ずさった。

「じゃあ、また明日ね。。」
「多恵。」
 俺が手を伸ばすより一瞬早く、彼女はきびすを返して門の中へ逃げ込んだ。俺は構わず追いかけ、庭先の芝生の上に彼女を押し倒した。

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