坂道では自転車を降りて
 俺の彼女だ。俺がどうしようと俺の勝手だろ。お前らに頼まれる筋合いじゃねぇよ。俺が睨むと、一年達は不満げな様子で、それぞれ引き上げて行った。どうもあいつらとは相性が悪い。

 気付くと部室は静まり返っていた。いつまで経っても彼女は出てこない。あれ、着替えていると思っていたんだが、まさか、逃げられたか?でも俺、入り口近くにいたけど、出て行くの見てないぞ。倉庫を覗いてみる。

 倉庫には電灯が無い。「大野さん?」暗闇の中呼びかけるが返事はなかった。俺は倉庫の中へ入った。暗くてよく見えないが、倉庫には誰もいないように見えた。どうやら逃げられたらしい。少しだけホッとする。

 帰る支度をして、もう一度戸締まりを確認する。部室と前室の電灯を消すとあたりは真っ暗になった。なんか、おかしいな。本当にいないのだろうか。もし中に残っていたら、閉じ込められてしまう。
 そうだ。鞄は?棚を見ると鞄がひとつ残っていた。もう一度倉庫を覗いてみると、今度は小さく息づかいが聞こえた。窓からの明かりを頼りに探すと、彼女は倉庫の隅にうずくまって震えていた。

「何してんの?」
「。。。。」
「こんなところにいたら、閉じ込められちゃうだろ。」
「。。。。」
「さあ、出てきて。帰るぞ。」
 俺は彼女の腕を掴み、立たせた。彼女はなんとか立ち上がると、泣き出してしまった。
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