坂道では自転車を降りて

「あ、あるよ。書き込みしてあるやつで良ければ。」
「なんだ、あるなら、最初からそっち見せてもらえばよかった。早く言ってよ。」
　俺が避ける間も与えずに、彼女は席を立った。立つ位置が近いよっ。焦る俺をよそに、彼女は男同士でする時みたいに、俺の肩に手をかけて躯を入れ替え、俺の背後から肩を押して椅子に座らせた。躯を入れ替えるとき、俺の腕に彼女の躯が当たったけど、全然気にしていないみたいだった。俺は口を開けたままモニタを見た。

「邪魔しちゃってごめんね。んで、何が上手く行かないの？」
両肩に彼女の手がある。耳のすぐ後ろから声がして、吐息が首筋にあたる。頭がクラクラする。

「あー、、なんか、台詞が生きてこないというか、、いい感じに運ばないんだ。」
「そうだね、キャラが、、、なんというか。。」
手が離れたのでおそるおそる振り返ると、彼女は探偵みたいな仕草で考えるポーズをとっていた。
「これ、役者はとくに決めてないの？」
「なんとなーくはあるけど、はっきりとは。」
「うーん。。。」