坂道では自転車を降りて
「君があんな醜態さらすからだろっ。なんとか言い訳してみろっ。バカ。」
「。。。ごめん。」
「あ”ー腹立つ。ほら、さっさと戸締まりして帰るよ。」
「。。。。うん。」

戸締まりはほぼしてあったのだろう。彼女は鞄と鍵を持つと部室を出て行こうとしたが、ふと振り返り、戻って来て俺の額に手をあてる。ひんやりした手が俺の額を一度覆って、すぐに離れた。
「体調は?大丈夫?」
「多分。」
「こんなところで寝ると、風邪ひいて、声でなくなるよ。明日本番なんだから、ちゃんとしろよな。」
「スミマセン。」
「本当に明日、大丈夫なの?」
「多分。」
「お客も入るんだよ?川村くんも来るかもしれないよ?」
「。。。。。」
そこは考えてなかった。
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