坂道では自転車を降りて
彼女はそっと俺に手を伸ばした。じっとしていると、ひんやりした手が遠慮がちに俺の頬を撫でた。俺はその手を掴んで握りしめた。
「ごめん。いやだった？」
「いや。。」
「まだ、彼女なんだよね。」
「うん。」
「神井くん、好きだよ。大好き。」

彼女は瞳に涙をためながら、それでも笑顔で言った。
「先に言うなよ。俺だって、君に負けないくらい好きだ。いや、絶対、俺の方がたくさん好きだ。」
俺は彼女をひきよせ強く抱きしめた。今はまだ恋人同士だ。
「かもね。」

　家まで送ろうかとも思ったが、これ以上話していると、またいつ泥沼にはまるかわからない。いい感じで帰りたかったので、俺たちは校門の前で別れた。

　夜、原から電話があった。俺は多分大丈夫だと伝えた。原は先に大野さんとも話したみたいで、深くは聞いてこなかった。こいつにもみんなにも俺は迷惑かけっぱなしだな。
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