坂道では自転車を降りて
「あのね。」
彼女は口もとに手を当てて、内緒話のジェスチャーをした。耳を寄せると、吐息が聞こえて、俺の心がざわざわ揺れる。
「。。。。。」
なんなの、その間は
「がんばってね。」
耳元でささやかれると、自分の頬が赤くなるのが分かった。
普通に言われたらなんでもない言葉なのに、耳元でささやかれただけで、こんなにドキドキするのは何故だろう?いつの間にか客席のことは気にならなくなった。
そうこうしている間に開演のブザーが鳴った。横を見ると彼女がまだ俺の方を見ていた。彼女の出番はまだ先だけど、本当ならそろそろ下手で山田とスタンバイしていなくちゃいけないんじゃないか。何かまだ用があるのかな。改めて彼女をよく見ると、脚がガクガク震えている。
考えてみたら、彼女はこれが初舞台だ。俺は彼女の手を握り引き寄せて、ぎゅっと肩を抱いてやった。緊張でガチガチの彼女は、引き寄せただけでよろけて倒れそうになる。いつだって淡々と、そして堂々として見える彼女だけど、こんなに緊張することもあるのか。
「大丈夫。練習通りやるだけだから。」
「うん。」
「単なる校内公演だ。客はみんな身内だ。」
「うん。」
「君ならできる。」
「うん。」
「よし行けっ。」
「うん。」
彼女は急いで、舞台下手へ戻って行った。
彼女は口もとに手を当てて、内緒話のジェスチャーをした。耳を寄せると、吐息が聞こえて、俺の心がざわざわ揺れる。
「。。。。。」
なんなの、その間は
「がんばってね。」
耳元でささやかれると、自分の頬が赤くなるのが分かった。
普通に言われたらなんでもない言葉なのに、耳元でささやかれただけで、こんなにドキドキするのは何故だろう?いつの間にか客席のことは気にならなくなった。
そうこうしている間に開演のブザーが鳴った。横を見ると彼女がまだ俺の方を見ていた。彼女の出番はまだ先だけど、本当ならそろそろ下手で山田とスタンバイしていなくちゃいけないんじゃないか。何かまだ用があるのかな。改めて彼女をよく見ると、脚がガクガク震えている。
考えてみたら、彼女はこれが初舞台だ。俺は彼女の手を握り引き寄せて、ぎゅっと肩を抱いてやった。緊張でガチガチの彼女は、引き寄せただけでよろけて倒れそうになる。いつだって淡々と、そして堂々として見える彼女だけど、こんなに緊張することもあるのか。
「大丈夫。練習通りやるだけだから。」
「うん。」
「単なる校内公演だ。客はみんな身内だ。」
「うん。」
「君ならできる。」
「うん。」
「よし行けっ。」
「うん。」
彼女は急いで、舞台下手へ戻って行った。