坂道では自転車を降りて
美波を始め、他の部員達の目が一斉に俺に注がれる。
「でも、大野さんはいつも出ないじゃん。」
出来れば彼女だけでも、帰って欲しい。二人で吊るし上げられるなんて、彼女が耐えられるわけが無い。俺だって、2人で行くくらいなら死んだ方がマシだ。
「今までは出られなかっただけよね?」
横江が要らないフォローを入れる。
「だから、お前らに聞いてないだろ。」

「大野さん、無理しなくていいけど、本当に出られないの?」
原が優しく訊ねる。
「神井くんは出たほうが。。。私は、、出られなくはないけど。。。」
「やめろよ。絶対からかわれるから。」
「大丈夫、皆は僕が押さえるよ。神井、彼女は俺が見てるから、お前は安心して吊るし上げられろ。さあ、みんな行こう。」
 結局、原のひと声で、二人で連れて行かれてしまった。断頭台への階段を上がる気分って、こういうのを言うんだろうな。

打ち上げはいつものお好み焼き屋。主役と演出の挨拶の後、俺も挨拶させてもらった。
「昨日はスミマセンでしたっ!」
勢い良く頭を下げた。
「彼女と別れましたっ。私事を持ち込んで、スミマセン。」
もう一度頭を下げる。
「それとっ、俺はもう、今日は覚悟してます。いくらでもからかってください。その代わり、彼女は勘弁してください。以上。」

 その後、原のおかげか、俺の挨拶が効いたのか、なんとか彼女は平穏にしているようだが、俺の方は全く容赦がなかった。野次馬が次々現れ、俺は詰られるままとなった。
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