坂道では自転車を降りて
「俺、こっそり見た事あるんです。大野先輩のスケッチブック、神井先輩の絵でいっぱいなんですよ。アツアツの落書きとかあって、もう恥ずかしくて見てらんないっていうか。」
「ほぉ~。」
「ねぇねぇ、いつ頃から付き合ってたの?」
「夏服の先輩の絵ありましたよ。夏より前ですよ。きっと。」
それは違う。適当なことを言いふらすなと思いつつ何も言えない。

「大野さんって、鈴木先輩とは、何でもなかったの?」
「川村先輩は?」
高橋め、余計な事を言うな。
「彼女に関する事はノーコメント。俺の事だけにして。」

「それで、お前はどうするの?」
「あ?」
「別れるの?」
「あれ?お前が振ったんだよな?別れたかったんじゃないの?」

「別れた方がいいとも思うんだ。」
これも本音だ。
「なんだよそれ。別れたいの?別れたくないの?」
「だって、俺といたって良い事ないもん。可哀想だよ。」
「なんだよ。結局 逃げてるだけじゃん。」
「だったら、俺が貰っちゃおうかな。」
「どうぞ。」
そんなことが出来るならね。
「こいつ、マジむかつく。どうせ俺には無理とか思ってんだろ。」
今 彼女をどうにかできるのは、俺かあいつだけだ。
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