坂道では自転車を降りて
「あいつと、キスしたの?」
「。。。した。」
「どうだった?」
「。。。。悲しかった。」
身体が強ばり、息が荒くなる。泣くのを我慢しているのだろう。耳が赤い。

「どうして悲しかったの?」
「彼が、とても悲しそうだったから。私のせいだと思ったから。」
「今は?」
「今?」
「キスしたでしょ?俺と。どんな気持ち?」
「。。。わからない。あなたがどうしてキスしてくれたのかわからないから。」
「そうか。。。わからないか。」

「あのね。俺も悪かったんだけど、君も隠さないでよ。信じられなくなるから。」
「ごめん。でも、君に嫌われたくなかった。」
「隠すから、疑いたくなるんでしょ?」
「ごめんなさい。」
「ねぇ、真面目な話、俺と川村と、どっちが好きなの?」
「神井くん。」
即答だ。
「本当に?」
「同じ事、川村くんにも聞かれた。」
「。。。。。」
「川村くんのことも好きだよ。とても大事な友達。。。だった。中途半端に話しても、きっと余計こじれるから、ちゃんと全部、話すね。」

彼女は俺から離れて座り直すと、あの日あったことを全て話してくれた。
ずっと好きだったと言われたこと。キスされたこと。暴れるあいつを止めようとして、逆に組み伏せられた事。消えろと言われて、あいつを置いて逃げるしかなかったこと。
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