坂道では自転車を降りて
 確かに。ここは2階だ。普通はやらないけど、やってやれない事はないかもしれない。俺だったらやってみる。でも、女の子が?スカートで?
「本当に?やったことあるの?」
「一度だけ。」
「まいったな。本当に、君にはびっくりだ。笑。」
「泣きながらだって、ちゃんと考えてるよ。私はいつだって大丈夫。」
「分かったよ。」
「だから、神井くんは心配しないでいいの。」
「。。。。」

大丈夫。心配しないで。言われるたび、なんだか拒絶されているようで、胸が締め付けられた。今さら、俺に甘えて欲しいというのは、男のわがままなのか?

「さっき、どうしてキスしてくれたの?」
彼女が訊ねる。
「なんでかな。。キスに理由がいる?」
「いらないけど。」
「多分、この前、途中で止めたから。君がキスしてって言ってたから。」
「そう。。」

「君は、あの時、公園で、どうしてキスして欲しかったの?」
「キスに理由がいる?」
「キスにはいらないけど、最後になるって、言ってた。」
「なんでだろうね。もう終わるんだろうなって思って。最後に私を君でいっぱいにして欲しかったんだと思う。それに、」
彼女は言葉を切った。

「それに?」
「上書きして欲しかったの。」
「?」上書き?
「たとえ別れたとしても、川村くんより君が好きなんだって、意地かな。彼にされた以上のことを君にしてもらいたかったの。自分勝手だね。君の都合も気持ちも何も考えてなかった。ごめんね。」
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