坂道では自転車を降りて
「あれは本当に俺のせいだ。俺が君を、夜なのに、あんなところに、1人で。。。なのに、自分で逃げて来た君は、俺に涙も見せなかった。触らせもしなかった。俺なんか、いない方がいいじゃん。って思った。」
あの日、電車で痴漢にあった君を、守りたかったと、ずっと思っていたのに。ずっと思っていたはずだったのに。

「そんなの、神井くんのせいじゃない。私が勝手に暗い道を歩いたから。それに、君は戻って来てくれたじゃない。私、大丈夫だったよ。」
「次の日だってそうだ。危ない目にあったのは君なのに、俺が君を置き去りにしたのに。俺のほうが、君に励まされて。わがまま言って。」

「俺、自信ない。。君は、やっぱり川村のところへ行けよ。あいつの方が、俺よりずっと君を知ってて、ずっと前から君を想って、君を守ってた。君はちゃんと償える。」
「なにそれ。」
彼女が険しい表情になる。

「一年前、部室に閉じこめられたときも、川村が助けてくれたんだろ?あいつがずっと大事にして守ってた君を、俺は公園なんかに。。俺、あいつに勝てる気がしないんだ。」
こんな情けない事をいうつもりじゃなかったのに。口が止まらない。
「ごめん。」

「勝手な事、言わないでよ。」
彼女は烈火の如く怒り始めた。
「勝ち負けじゃないでしょ。私はモノじゃないの。私の気持ちはどうなるの?自分は、私の気持ちを疑って、私を責めて別れようとしてるくせに、川村くんのところへ行けって?彼がこんな気持ちの私を喜んで受け入れるとでも思ってるの?君が身を引けば、彼や私が幸せになれると思うの?バカじゃないの。バカにし過ぎだよ。川村くんのことも。私の事も。自己中もいい加減にして。」
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