坂道では自転車を降りて
 頭の中でぼんやりしていた主人公達が、細部まではっきりと描かれている。そうだ、詰め襟ではなくブレザーの方が合う。くせ毛で、生意気そうだが軽薄で、こんな感じだ。
「実際にはこんなの手に入らないから、学校の制服なんだろうけど、」

「で、ガリ勉君はこんな感じ?」
ドンピシャだ。俺は言葉もなく彼女の絵を見ていた。
と、ここまで見せて、彼女はしばらく黙っていた。見ると、まだ絵はありそうだった。
「まだ、あるの?」
「ここまでは、脚本そのままだから、君の頭の中のとそう遠くないと思うけど、ここからは、違うよ。見ちゃっていい?」
「。。。。。」
「絵に引きずられて、かえって書きづらくなるかもしれない。」

「。。。見せてくれ。」
しばし悩んだが、このままで一人で書いていても埒が明かなそうだったので、見せてもらう事にした。
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