坂道では自転車を降りて
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 突然、大音量のチャイムが部室に響き渡って、俺は我に返った。今、俺は何をした?何をしていた?

 目の前でソファに横たわる彼女は茫然としていて、放心状態だった。着衣は乱れ、頬は涙に濡れている。濡れた唇からは、嗚咽なのか、荒い息づかいが漏れる。身体は小刻みに震えていた。やばい。どう考えてもやりすぎた。

「ご、ごめん。」
聞こえていないのか、彼女は目を閉じたまま、動かない。
「ごめん。多恵。大丈夫?」
もう一度言ってから、流れる涙をハンカチで拭ってやると、彼女がうっすらと目を開けた。自分に何が起こっているのか、理解できないといった顔だ。抱き起こして優しく抱き締めると、小さな声で「お願い。もう許して。」と言った。許すも何も、、それはこっちの台詞だ。

 やっぱりと言うべきか、彼女は何も分かっていなかった。俺が触れるとすぐに怖いと言って泣きだした。俺だって最初は、ちょっと胸に触って抱き締めて、イチャイチャして、それで終わりにするつもりだった。
 なのに、俺の手に指に敏感に反応する彼女が嬉しくて、自分の喘ぎ声に戸惑う彼女が可愛くて、悲しげに濡れた瞳が切なくて、気付いたら彼女がぐったりするまで、弄りまくってしまった。暴れる彼女の腕を押さえつけ、悲鳴をあげる口を塞ぎ、身体に触れると、彼女は泣きながら俺の身体の下で悩ましげに踊った。チャイムが鳴らなかったら、どうなっていたかわからない。
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