坂道では自転車を降りて

彼女はあらためて俺の方をみておはようと言って微笑んだ。少し緊張した顔をしてるのは俺も同じなんだろうな。

「私、よく道聞かれるんだよね。なんでだろ？」
「親切そうな顔してるからじゃない？」
　それだけじゃない気もするが。。あらためて彼女を見ると、いつもより髪がつややかでくるんと纏まっている。顔もなんだか色っぽくて、ドキドキする。

「それって、どんな顔？」
「どんなって言われても、親切そうな顔。」

こんな田舎の駅でナンパされちゃうなんて、実は結構可愛いのか？
「神井くんは、顔怖いよね。怒ってるみたい。今も。」
「あぁ、よく言われる。」
「もう少し、優しそうな顔したら？」
「ほっとけよ。」
「私はおっとりしてるってよく言われるから、そういう顔なのかな。」
おっとりね。。。部活の時の彼女を見たら、誰もおっとりとは言わないだろうが。

「よくあるの？」
「今日はちょっと早くついちゃって、」
赤くなって答える。
「ごめん。俺も早く来たら良かった。どれくらい待った？」
「神井くんは、時間通りだったよ。私、うっかりが多いから、早めに出るの。いつもは早く着いても近くの店とか覗いてるんだけど、今日はなんかそわそわしちゃって。。ぼーっとしてたから、暇そうに見えたのかも。」
肩をすくめる。