坂道では自転車を降りて
「あとねー、、全体なんだけど、成長したい本能と、成長したくない自分との葛藤で山椒魚をモチーフにしてるけど、井伏鱒二の台詞引用しても、誰も知らないんじゃないかなぁ?そこは世界観だけにしておいてさ、もっとメジャー路線で台詞を引用できないかな。全体がなんか暗い感じだから、漫画のパロディ的な台詞を入れたりしてみたら?成長物語ならありきたりだけど、ガンダムとかエヴァとかから台詞を引用したら、息抜きになるんじゃない。」
言いながら、少女の漫画を描き、横に吹き出しをつけ「あんたバカ?」ガリ勉君の横には「認めたくないものだな。」と書き込んだ。思わず吹き出してしまう。

「軽くなり過ぎかな。ガンダムじゃなくて、ソクラテスとかの哲学者の言葉のほうが、雰囲気合うか。それを、変な感じで入れるの。”チャラ男が何言ってるの?”的な」
 少年漫画風のドヤ顔の主人公が目に炎を灯して「我思う故に我ありだっ。」と叫ぶ。これも思わず苦笑いだ。

「すごいな、、、君が脚本を書いたほうが良いんじゃないか?」
彼女は興奮して絵を眺めている俺の顔を覗き込んで言った。
「参考までに、こんな感じは、どう?」
「十分だ。修正が大変かもしれないけど。筋も少し変えたいな。。。これみんな使わせてもらって良いんだよな。」
「もちろん。好きなところだけでも。絵、持って行く?」彼女はスケッチブックを惜しげもなくビリビリと破って、絵を切り離し、俺に手渡した。
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