坂道では自転車を降りて
「でもこのままじゃ、生駒さんの本だって、9月にやれないかもしれないよ。他には誰も書いてこなかった。また既成の本をやる部に戻るんだよ。君が、切り拓いて来た道が、また閉じちゃう、」
 彼女は胸に何かつかえたみたいに声を詰まらせた。そんな風に考えていたのか。
「中途半端に終わっても、誰も君だけのせいになんかしないよ。やれるだけやろうよ。原くんだって、納得してる。ぐだぐだになんてしない。させない。」
 不安そうな顔。すがるような目。そんな顔されても、困るよ。。。俺はこれ以上無いくらいの盛大なため息をついた。

「言いたい事は分かったよ。」
 わかったけどさ。なんか釈然としない。原と2人で別室でそんな相談をしていたわけだ。俺を見て慌てて話を引き上げた2人の視線を思い出して、なんとなく不機嫌になる。

「たださぁ、どうして君や原が、勝手に俺のやること決めるんだよ。それもこんな無茶苦茶。」
「それは、ごめん。」
「君はごめんで済ませて、何もしないんだろ。気楽で良いよな。」
これくらいのイヤミは言わせてもらわないと、割が合わない。
「ごめん。確かに、私は何もできない。そこは、、もう、ごめん。」
「ったく。」
「。。。。嫌なら、書かなくて良いよ。」
「そんなこと言ってない。」
もう。。なんて無茶苦茶な彼女なんだよ。
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