坂道では自転車を降りて
 彼女は先日の可愛らしい格好とは違って、ジーンズを履いていた。モコモコのフリースはサイズもイマイチ合ってない。暖かそうだし、似合ってて可愛いけど、もしかして男物なんじゃ。要するに、思いっきり普段着だ。

「どうしたの?」
「本、どう 書けそう?」
いきなりそれかよ。部活モードの鋭い視線で俺を正面から見据えた彼女に、なんだか舞い上がっていた自分を恨めしく思う。

「。。。。おはようございます。」
イヤミを込めて慇懃に挨拶する。
「昨日の話し合い、ボイスレコーダーにとってたやつ、文字に直して来た。」
 俺のイヤミはスルーされた。昨日の話し合い、録音してたのか。。用意周到としか言いようがない。

「俺の家、なんで知ってるの?」
「なんでって言われても。」
「。。。。。。」
そういえば、年賀状を貰ったな。小学生じゃないんだから、住所が分かれば来られるよな。そんなことはどうでも良いか。。本ね。。

「まだ、大して書けてない。筋が決まらないと。」
「何か手伝う事は?」
「あの、俺、昨日寝たの4時すぎで、もう少し寝たかったんですが。」
「そう思って、10時過ぎに来たの。もう6時間寝てるじゃん。」
「。。。。。」
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