坂道では自転車を降りて
「大野さん、どっかぶつけてなかった?大丈夫?」
神井先輩は原先輩を無視して大野先輩のおでこを見てやる。
「傷はないけど、このへん?痛い?」
自然な流れだし、喧嘩が始まるよりはずっと良いんだけど、このイチャイチャ感が、なんか癇に障る。
「なんか部室の気温、急に上がってませんか?」
俺の後ろで椎名がふてくされてぼやいたが、神井先輩はそれも無視した。大野先輩が困った顔をした。

「触るといたいけど、触らなければ大丈夫。原くんは?頭、大丈夫?ごめんね。」
「すごく痛い。大野さん診て。」
原先輩がまたからかうように言う。神井先輩は、俺が診てやると言って原先輩に近づいた。大野先輩が心配そうに見ている。

「どういうつもりだ。」
「別にィ。」
「次やったら、本気で殴るからな。」
 神井先輩は原先輩の頭を診ながら言った。なんかかんか言っても、この2人の絆は深い。突っ走る神井先輩を原先輩が陰に日向にサポートしていた。神井先輩もそれは認識している筈だ。だが、大野先輩の件では原先輩の思惑を外れた形になったのだろう。それに、原先輩は大野先輩よりも川村先輩のほうが気が合うみたいだった。でも川村先輩は辞めてしまった。春の舞台を作って行く中でも、またいろんなことがあるんだろうな。

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