坂道では自転車を降りて
原はあきれた顔をした。
「顔も見たくないって言って、泣きながら逃げ回っている女の子を、いきなり捕まえて抱きしめたの?。。。勇気あるな。勘違いだったら、ゴーカンじゃん?」
確かに、そんな感じでした。
「お前、やる事がいちいち大げさというか、大胆だよなぁ。羨ましいよ。」
原は今度は大笑いした。全然羨ましそうじゃない。

「笑うなよ。支離滅裂なのは認めるけど、俺だって、何がなんだか分かんなくて、必死だったんだ。」
「必死ねぇ。お前、本当に彼女の気持ち分かってなかったの?」
目尻の涙を拭いながら原が訊ねる。
「何が?」
「俺から見たら、一目瞭然だったけどなぁ。お前らが両想いなの。」
え?そうなの?

「で、文化祭の演出が後半ぐだぐだだったのも、結局のところ彼女関係だったってことでいいの?」
「いやそれは、それだけじゃないんだけど。でも。あの頃、避けられてて。それまでいい感じだったから、なんでだか全然分からなくて、もう全てが真っ暗になったみたいで、何も手につかなくて、ほんっと迷惑かけた。ごめん。」

「彼女はお前の事を、すごくよく分かってるように見えるけど。違うの?」
「今はね。あの頃は、多分、何も分かってなかったんじゃないかな。自分の事も、俺の事も。最近は俺の事は、よくわかってくれてるような気がする。でも、自分の事は全然わかってないよ。多分。」
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