坂道では自転車を降りて

「。。。。スミマセン。」
「なんでそんなことになったの？あいつは、もう半分引退したような気分で、未練なさそうにも見えるけどね。」
「そうなんですか？」
「本心は知らないよ。でも、もう仕方ないだろ。本人もあきらめてるんじゃないかな。」
「先輩は、神井先輩はそれでいいんですか？」
「だって、俺に何ができる？彼女を苛めるなって、椎名に言うのか？俺が言ったからって、聞くようなやつじゃないだろ。余計からかわれるだけだ。」

「でも、川村先輩は椎名を押さえてましたよ。」
「なにっ！」
思わず大きな声がでてしまった。
「椎名は、大野先輩が、好きというか、気になってしょうがないんですよ。だからからかって苛めるんです。以前は、大野先輩にもからかうネタなんかほとんどなくて、返す刀でバッサリ切り捨てられてて、それが見てて楽しかったんですけど。
　それでも時々、大野先輩が困ったときは、ほら、大野先輩、かわいいとか女の子だとか言われると、赤くなって固まるじゃないですか。そういう時は、川村先輩が横やり入れて牽制してくれてたし、大野先輩を困らせると後で川村先輩に報復されるから、みんな大野先輩をそんなにひどくからかったりはしなかったんです。
　でも今は川村先輩もいないし、大野先輩は神井先輩のこととか言われると、全然ダメで、俯いて固まっちゃうんです。俺達も最初は大野先輩が困って赤くなるのが面白いというか、その、可愛くて、一緒にからかったり、少し楽しんでた所があって。。
　でも、今年に入ってからかな。。椎名が暴走気味で、先々週だか、神井先輩が昼休みに俺達を追い出したでしょ？それでからかわれたら、とうとう先輩が泣いちゃって。それ以来、先輩、あまり来なくなっちゃって、たまに来ても、俺達に任せたとか言って、すぐ帰っちゃうし。多分、椎名も本意じゃないし、気にしてると思うんですけど。」