坂道では自転車を降りて
「俺、今の話聞いててなんとなくわかった。多分、裏の4人はなんだかんだで、川村を慕ってたというか、一目置いてたんだろう。大野さんの彼氏の座の件も含めてね。あいつ世話焼きだったし、頭もよかった。それで上手く回ってた訳だ。なのに、大野さんがお前とひっついて、失恋した川村は退部だろ。そりゃーお前のことは気に食わないだろうよ。それに、大野さんに対しても不信感が残ってるんじゃないか?」
「なんだよ。それは。」
ここでも俺が悪者かよ。

「それより、よかったの?」
「何が?」
「一年が戻ってくれって頼んだら、責任感の強い彼女は戻らざるをえないだろ?。」
「だろうな。」
「よかったのか?」
「。。。わからないけど。仕方ないだろ。」
「そうだな。。」

「川村の抜けた穴か。なんとかしないと、負担が全部、多恵に行ってる。」
「そうだな。。。もう彼女も戻らない方がいいんじゃないか?春の公演の装置は、今あるヤツで間に合いそうなんだろ?」
「だなぁ。。」

 自転車での帰り道、高橋の話を反芻した。彼女は本当はどうしたいんだろう。俺は、もう辞めても良いのではないかと思う。だが、一年にドアを見てくれと言われた彼女は嬉しそうだった。最後まで一緒にやりたくなかったわけがない。元に戻れるなら戻してやりたいと思う。だが一度壊れた人間関係は、そう簡単には戻らない。
 それにしても、活動中に泣くなんてよほどの事だ。知らずにいた自分が悔やまれる。今夜、電話してもいいだろうか。電話って、苦手なんだよなぁ。ああ、そうだ。
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