坂道では自転車を降りて
「そうじゃなくて、本当は心から笑って欲しいんだけど。」
「ちゃんと心から笑ってるよ。」
「俺、見分けつかないんだよな。はぁ。」
「神井くんこそ、笑ってよ。」
「俺、嬉しくないと笑えないんだよ。」
「役者のくせに?面白いね。」
 笑顔で俺を見つめると、頬にそっと触れた。やさしい感触。いつもいつも俺ばかりが与えられて。。

「多恵、明日の放課後の予定は?」
「明日は美術部でデッサン会。劇部はお休みって言ってある。ひさしぶりだから楽しみなんだけど、、、なんかあるの?」
「それ何時頃まで?一緒に帰らない?」
「え、明日も?嬉しい!」
彼女は破顔した。

「えとね、だいたい1時間くらい描いて、その後 みんなで見せ合うんだけど、それはもうエンドレスだから、30分くらいで抜けちゃって構わないよ。だから、5時半か、それ以降だったら、電話してくれたらすぐ出られる。」
「分かった。じゃあ、こっちが終わったら電話するよ。」
「うん。」
「じゃあ、また明日。」
「また明日。ありがとう。」


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