坂道では自転車を降りて
教室のドアが開閉して、新しい部員が加わったというのに、部屋の中の者は誰1人としてそちらを見ようともしない。みんな彼女を凝視しては、スケッチブックに描いている。すごい集中。なんなんだこいつら。
この隙に逃げてしまおう。俺はこそこそと逃げ出した。階段を降りきった頃、タイマーの音が遠くで聞こえた。10分経ったのか。
びっくりした。あんな世界があるんだ。どきどきする胸を抱えたまま、俺は体育館へ急いだ。切り替えないと、知恵熱を出しそうだ。そのまま舞台へ行き、活動に戻った。活動が終わり部室に戻った時には、裏の一年は消えていた。椎名を殴り損ねたが、まあいい。
帰り支度をしてまた美術室へ向かった。終わったら電話する約束だったのだが、もう一度、あそこにいる彼女を見たいと思った。何だろう何かが胸の中でもぞもぞする。美術室へ行くと、モデルは既にいなくなっていたが、彼女はまだ絵を描いていた。他の部員が後ろから絵を覗き込み何かコメントしている。一枚一枚、描いた絵を見ながら、手を入れたり、真剣な顔で頷いたり、笑ったり。俺になかなか気付かない。気付いた他の部員が声をかけてくれた。
「あれ、電話してくれたら行ったのに。ちょっと待ってね。今片付けるから。」
帰り支度をしながら、俺の事を女友達にからかわれている彼女。恥ずかしそうに頬を赤らめて、でも、ちょっと嬉しそうで、本当に普通の女の子だ。そういえば、最近は男の後輩に囲まれて、凛とした表情で作業している姿しか見ていなかった。肩の力が抜けて、リラックスしているようにみえる。あんな表情、ずっと見ていなかった。そうだ。ずっと前、先輩や川村がいた頃はあんな表情をしていた。考えながら見ていると、他の部員がチラチラと俺をみた。俺は美術室の前から離れた。
この隙に逃げてしまおう。俺はこそこそと逃げ出した。階段を降りきった頃、タイマーの音が遠くで聞こえた。10分経ったのか。
びっくりした。あんな世界があるんだ。どきどきする胸を抱えたまま、俺は体育館へ急いだ。切り替えないと、知恵熱を出しそうだ。そのまま舞台へ行き、活動に戻った。活動が終わり部室に戻った時には、裏の一年は消えていた。椎名を殴り損ねたが、まあいい。
帰り支度をしてまた美術室へ向かった。終わったら電話する約束だったのだが、もう一度、あそこにいる彼女を見たいと思った。何だろう何かが胸の中でもぞもぞする。美術室へ行くと、モデルは既にいなくなっていたが、彼女はまだ絵を描いていた。他の部員が後ろから絵を覗き込み何かコメントしている。一枚一枚、描いた絵を見ながら、手を入れたり、真剣な顔で頷いたり、笑ったり。俺になかなか気付かない。気付いた他の部員が声をかけてくれた。
「あれ、電話してくれたら行ったのに。ちょっと待ってね。今片付けるから。」
帰り支度をしながら、俺の事を女友達にからかわれている彼女。恥ずかしそうに頬を赤らめて、でも、ちょっと嬉しそうで、本当に普通の女の子だ。そういえば、最近は男の後輩に囲まれて、凛とした表情で作業している姿しか見ていなかった。肩の力が抜けて、リラックスしているようにみえる。あんな表情、ずっと見ていなかった。そうだ。ずっと前、先輩や川村がいた頃はあんな表情をしていた。考えながら見ていると、他の部員がチラチラと俺をみた。俺は美術室の前から離れた。