坂道では自転車を降りて
昼休み、部室に向かう俺を原が呼び止めた。
「飯塚の意見はもっともだ。」
「そんなの分かってる。」
でも、上手くできないんだ。
「お前だって困るだろ。俺だって困る。」
「わかってる。。努力してみるよ。」
「問題はひとつひとつ潰して行くしかない。まずは、織田と話してみな。」
「織田?」
もう1人の大道具だ。織田とはほとんど話した事がなかった。熱心でないのか以前はあまり見かけなかったが、最近はよく見る。
「高橋は気が弱くて、椎名に意見できない。織田なら椎名と対等だし、椎名は織田に借りがあるんだ。同じ大道具だし。お前、織田と話した事ある?」
「ほとんどない。でも、」
「なんだ?」
「いや。」
多分、良く思われてないんだろう。いつも睨んでくる。
「あいつ、実はかなり切れるよ。一歩引いた所があるけど、周りもよく見てる。あいつがもうちょっと熱心だったら、次の舞台監督はあいつで決まりなんだが。お前が頭を下げれば、多少は彼女の面倒をみてくれるんじゃないかな。あいつを抱き込もう。」
織田は、彼女をどう思ってるんだろう。高橋の話には出てこなかったけど、一緒になってからかってたんだろ。信用できるのか?