坂道では自転車を降りて
「ぶっちゃけ、先輩達、裏方組の事、甘く見てません?」
「そんなことないよ。すごいと思ってるよ。ただ、よく考えてなかった。」
「俺も大野先輩も掛け持ちしてるけど、ちゃんと演劇部優先でやってますよ。役者だって、立ち稽古が始まるまでは、結構だらだらやってるじゃないですか。役つかなかった人なんか、基礎練だけで帰ったりしてるし。だったら、こっち手伝ってくれたらいいのに。」

「わかった。お前の言いたい事はよくわかった。よく知らないのに、多、じゃなくて大野さんを振り回して、本当に悪かった。それに、教えてもらって本当に良かった。」
「もう、多恵でいいですよ。あだ名だと思えば気になりません。」

「今更、こんなこと頼めた義理じゃないのかもしれないけど、頼む。多恵を守って欲しいんだ。もう泣かないですむように、また楽しく活動にでられるようにしてやってくれないか?できるか?」
「俺達だってやってますよ。椎名もかなり反省してるし、だいぶ落ち着いて来ました。あとは、神井先輩が余計なことをしなければ、なんとかなるんじゃないですか。」

「俺ができること、他になんかあるか?」
織田は困ったような表情で俺をみた。多分、俺が相当情けない顔をしているからだろう。
「。。。。心配なのは分かるけど、いちいち俺達にヤキモチ灼かないでください。見苦しいし、大野先輩がやりにくくなるじゃないですか。」
「努力する。他には?」
「今は、特には。あぁ、それから。」
「何?」

「椎名の気持ちも分かってやってくださいよ。先輩に惚れるのは自由でしょ。川村先輩がいなくなって心細そうなのに、頑張ってる先輩見てて、慰めたくなるのは当たり前だし、ワガママ放題で先輩を振り回してるあんたから、奪いたくなってもしょうがないでしょう。」
「だったら、どうして多恵を苛めるんだ?なんにもならないじゃないか。」
「大野先輩を苛めてなんてませんよ。それは誤解です。」
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