坂道では自転車を降りて
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 大野先輩と椎名と3人で倉庫で図面を整理していた。古い引き戸が動く事が確認できたので、新しく本棚を作る事になった。本棚の図面なんて、新しいのをすぐ引けばいいのに。仕掛け部分だってアイディアはいろいろ考えてある。だが、大野先輩はとりあえずは参考になる図面と写真を探してみようと言った。椎名はともかく俺は大丈夫なのになぁ。先輩は本棚と関係ない壁や鏡台の図面と写真を熱心に見比べていた。何を探しているんだろう。そこへ、稽古を終えたのか、役者が戻って来た。ガヤガヤと声が聞こえる。

「神井先輩も、今のところ落ち着いてますね。今回は大丈夫ですかね。」
「文化祭でも、クリスマスでも、最後は荒れて、どうなるかと思ったもんな。」
「過ぎた事だけど、クリスマスはかなりヤバかったな。なんとかなって本当に良かった。コンクールもなー。残念だったよな。」
 戻ったのは全員ではないらしい。何人か男子の声が聞こえる。
「コンクールは神井先輩もそうだけど。どっちかっていうと部長じゃないですか?」
「そうだったっけ?笑。」
「それにしても、なんだか。。」
「なんだ?」

「いや、大野先輩は真面目だし有能だし、実は結構可愛いし、素敵だと俺も思いますよ。それに神井先輩が普通の彼女以上に大野先輩を必要としてることも解りました。でも、あそこまで振り回されちゃうって、どうなんでしょう?」
「ああ、俺もそれは思った。本番直前に別れる別れないの大ゲンカするとか、大野さんは裏だから良いけどさ、神井は舞台に立つんだし、もうちょっと考えて行動できないのかね。」
「大野先輩もあの時は舞台に立ちましたよ。」
「そういえば、そうだな。あいつら何を考えてたんだろうな。」
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