坂道では自転車を降りて
「それに、そんなの大野先輩にだけなんじゃないの?」
「そんなことないよ。生駒さんの脚本だって見てあげてるじゃない。美波さん達だって、別に怖がってるようには見えないよ。厳しいだけの演出じゃあ、みんなついてこないんじゃないの?」
「神井先輩がすごいのは認めますよ。本書いて、みんな纏めて演出して、何でもガンガン進めてっちゃうし。でも、怖いよな。なんか言っても、ズバって切り捨てられちゃうし。最近ちょっとマシになったような気がするけど、」
「別に切り捨てたりしてないよ。自分の考えを話してるだけでしょ?その、変に甘やかさないだけで、普通だよ。」

「普通じゃないよな。」
誰かがぼそりと言った。彼女自身も、言ってしまってから、自分でも違うと思ったのか、一生懸命、言葉をさがしている。

「えっと、あー、、怖いんじゃなくて、、厳しいというか、、えと、なんだ。。そう、真剣なの。普通じゃないのは、真剣だからなの。」
 ちょっとムキになって赤くなってて、面白い。彼女の様子が可愛くて、みんな和んだ。神井先輩、本当うらやましいよなぁ。

「あ、わかった。俺達にだけ優しくないんだ。」
藤沢が言う。
「あ~。なるほどね。」
「納得。」
やっぱり皆もそう思ってたのか。でも俺だって、自分の彼女がこんな状況なら多少はモヤモヤするだろうから、仕方ないとも言える。

「何が?なんで?」
「神井先輩、その辺が結構小せぇよな。」
そうとも言えるが、今は椎名が何を言っても、俺には負け惜しみに聞こえてしまう。
「目つき怖いしな。」
「高橋とか本気で殴られそうだったんだろ?」
「そうなの!!なんで?」
大野先輩は心底ビックリしている。
「大野先輩を泣かせたから。」
「あー。。。。」
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