坂道では自転車を降りて
彼女は困ったような、申し訳なさそうな顔をした。だが、あの件に関しては、非はむしろ俺達にある。神井先輩が一方的に悪いわけではない。
「いえ、高橋が、余計な事を神井先輩に進言したからですよ。そしたら返す刀でバッサリ切り捨てられて、お前ら泣かしたのかって言われて、危うく殴られそうになったんだそうです。」
「。。。。ごめん。私のせいで。でもでも、実際には殴られてないんだよね?」
「ですね。いやでも、あの目で睨まれて、『殴っていい?』って聞かれたんですよ。すげー怖かったです。」
「なんか、ごめんね。」
「いや、先輩の反応は当然でしょ。彼女が泣かされたんだから。」
「でも、私としては、皆のほうも神井くんともうちょっと仲良くしてもらいたいんだけど。」
安堵のため息をついた後、おずおずと言う。彼女も俺達と神井先輩の間で板挟みになって苦しい所なんだろうが、いちいちオロオロしているのもなんだかな~と思う。
「別に、仲悪くしてるつもりはないですよ。普通にやってますよ。椎名以外は。」
からかうように椎名を見ると、彼女は椎名に訊ねた。
「椎名くんはどうして神井くん嫌いなの?」
この女も無邪気な顔して残酷だな。椎名の気持ちを知らない訳じゃないだろうに。
「理由なんかないですよ。単に、嫌いなんです。」
「でも、一緒の部にいるんだからさ、仲良くやろうよ。」
一瞬目が点になった。何を馬鹿な事言ってるんだろう。最初から友人だったのならともかく、この状況で仲良くなんかできるわけないし、どう考えてもあんたが言う事じゃないだろう。それとも本当に全く気付いていないんだろうか。