坂道では自転車を降りて
 昼休み部室へ行くと、生駒さんがチョコレートをくれた。しかも手作りだ。原や山田の分もあったから、義理チョコなんだろう。安心して頂く事にする。生駒さんにもどこかに本命がいるのだろうか。もしかして山田かな。生駒さんの本気は重そうだな。要らない詮索をしてみるが、単にお祭りに乗っかって作ってみただけなのかもしれない。

 それにしても、去年は一つも貰えなかったことを考えると、今年は何が起こったのかといった感じだった。

 放課後、舞台での活動が終わって部室に戻ると、甘い香りがした。裏方連中が口から香ばしくて甘い匂いをさせている。見ると机の上に箱と紙袋があり、袋の中にチョコクッキーが少し残っていた。
「これ、どうしたの?」
聞くと、
「大野先輩が持って来たんです。」
高橋が答える。
「。。。そっか。俺も食べていい?」
甘い香りに、お腹が鳴る。
「あれ、まだ残ってたんだ。ダメだよ。それはみんなの分だから。」
多恵が答える。

「先輩、失敗作だからって、正直に言ってくださいよ。」
「神井先輩はまだ貰ってないんですか?」
「うん。」
「後でちゃんとしたのあげるから。」
「そうだな。止めとくか。」
「結構すごい味でしたよ。」
「えっ。」
「もうっ。みんな食べたくせに。」
「だって、腹減ってるもんな。」
「焦げてたり、生焼けだったり、やたら硬かったり、ね。」
「わーっ。わーっ。黙っててよ。もう。」
「歯が折れそうなヤツとかありましたよ。先輩も気をつけて食べた方が良いですよ。」
「。。。。。」
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