坂道では自転車を降りて
 着替え終わった彼女が現れた。2人で部室を出る。
 
「仲良くやってるじゃん。椎名も俺がいなけりゃ、普通なんだろ?」
「うん。最近みんなすごく頼もしくなったし、優しくしてくれるの。でも、、優しすぎて、気持ち悪いというか、居心地悪い。」
「贅沢だな。」
「うん。でも以前だったら、私、あんな風に優しくされてたら、特別扱いするなって怒ってたような気がする。最近は、素直にありがとうって言えるようになった。私も変わったような気がする。」
「それは良かったんじゃない。」
「そうだね。だからって甘えすぎないようにしないとね。」
「それはそうだな。」

 自転車の後ろに彼女を乗せて走り出す。程なく公園についた。自転車を停めて、彼女の手を握ると、彼女は俺に身体を寄せた。弾む身体を抱き寄せると、チョコの甘い香りがする。彼女はクスクスと甘い笑みを漏らしながら、俺の唇に指先で触れた。
「そろそろ、貰えない?」
俺が言ったら、
「何を?」
彼女はとぼける。こいつ、地味にSだな。

「君、ときどき意地悪だよね。。。。」
「冗談だって、ありますよ。上手く出来なくて、恥ずかしいけど、頑張って作りました。どうぞ貰ってください。」
鞄からゴソゴソと包みを取り出した。焦茶の包みに若草色のリボンがかかっていた。あまりバレンタインらしくない配色だな。でも、芽吹いたばかりの俺達の関係みたいで、分かる気がする。彼女なりのこだわりなんだろう。

「ありがとう。いただきます。」
「結構、難しいんだね。いつも何気なく食べてたけど、もっとありがたく食べないといけないと思いました。」
は?
< 501 / 874 >

この作品をシェア

pagetop