坂道では自転車を降りて
「でも、私も皆みたいに作ったら良かった。なんで皆わざわざ友達に手作りを配るのかと思ってたけど。本命が出来たときの為に、毎年練習してるんだね。」
「。。。。。」
本当にそうなのかな。単に食べたいだけなんじゃ。
「それより、食べないの?そのまま持って帰る?」
「どうしよう。とりあえず開けてみても良い?」
「うん。」
ベンチに座って、キレイにラッピングされた箱をゴソゴソ開けて、2人で覗き込む。暗いな。
「あれ、クッキーじゃないのも入ってる。」
「うん。クッキーは火加減とかいろいろ難しくて、何度やっても上手く出来なかったんだ。そこに入ってるのは、その中で一番ましなヤツ。」
「こっちの丸いのは?」
「トリュフ。そっちの方が簡単で失敗が少なかった。」
「ふーん。」
そんなにいろいろ苦労してくれたんだ。なんだか、嬉しいような、気の毒なような。。丸いのを一つ食べてみる。こっちのほうが失敗少ないって言ったし。あれ?
「なんだ。旨いじゃん。」
「そぉ?」
真面目な顔で話していた彼女の顔が、突然、花が咲いたみたいに明るくなった。
「大丈夫。本当に旨いよ。」
「良かった。」
安心したように、手を胸に充てて、息を吐いてから、こっちをみてえへへと笑った。子供みたいな無邪気な笑顔に、見てるこっちが恥ずかしくなって来る。