坂道では自転車を降りて
「一緒に食べる?」
一つ、口に入れてやろうとしたら、
「んー、勿体ないから、神井くん食べて。」
笑って辞退したので、また自分の口に放り込んだ。甘い味が口に広がる。旨いじゃん。あいつら俺をからかったな。
「残りは持って帰って大事に食べる。ありがとう。」
 チョコを貰って満足した俺は、それだけで胸いっぱいで、ありがとう以上の言葉が見つからない。ドラマとかだったらきっと「幸せだ。」とか「愛してるよ。」とか、なんとか言うんだろうけど、そんなの恥ずかしくて言えない。ってか俺のキャラじゃない。これ以上なにをしたら良いのか解らず、ただドキドキと彼女を眺めた。

 彼女は、急にモジモジと視線を揺らし、肩をすくめて、上目遣いで俺を見た。頬を紅く染めて、おずおずと口を開く。
「ねぇ。」
「ん?」
何なに、どうした?
「キスして、欲しいな。なんて。。。。。言っても、良いですか?」
むちゃくちゃ恥ずかしそう。確かに彼女はこんなこと言うキャラじゃない。でも、でもでも、すっげー可愛いじゃないか。鼻血が出そう。チョコだけに。
そうだ。キスしなきゃ。キスすれば良いんだ。

「あぁ、それは、もちろん、喜んで。」
 俺は、多分これ以上ないくらいデレデレした顔をしていたと思うんだけど、、とにかく、彼女にキスをした。優しいキスを繰り返し、頬を撫でて、抱きしめた。

「くちびる。あまい。」
彼女が笑う。
「うん。美味しいよ。」
 俺も笑って、額を寄せて見つめ合う。彼女の手が俺の膝に置かれる。耳たぶに触れると最初はくすぐったそうしてたけど、やがて気持ち良さそうに目を閉じた。まるで猫みたいだ。こんな風に甘える姿を俺以外の誰が知ってるだろう。本当に可愛くて、この可愛い顔をずっとずっと眺めていたい。じっと見つめながら頬に唇に指を這わせる。俺の視線に気付くと、彼女が恥ずかしそうに俯く。ああ、この顔、なんでこんなに可愛いのかなぁ。。
 俺の心臓がバクバク言いだした。やばいよ。これ以上じゃれていたら、また自制が利かなくなってしまう。
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