坂道では自転車を降りて
「さっきも言ったでしょ。自分の気持ちに振り回されるんだ。君が好きで、君に会いたくて、君に触りたくなる自分に。」
「でも、、」
「今、触ってもいい?」
「えっっ、今ここで?」
「うん。ちょっとだけ。おいで。」
俺は、彼女を捕まえて腕に納めた。暗い歩道。車は沢山通るけど、人が通る事はなさそうだ。彼女の額にキスを落とし、優しく抱き締めると、彼女はまたしくしく泣き始めた。あぁ、もう。なんでこんなにすぐ泣くのかなぁ。
自分のコートのボタンを外して、彼女をコートの中に隠す。彼女は俺の胸の中で泣きながらゴソゴソ動くから、くすぐったい。すっかり冷えちゃった彼女の手が俺の胸に触れる。抱きしめながら、髪におでこに唇を寄せる。彼女の口から甘い吐息が漏れて、身体を俺に預けた。柔らかくて弾む躯の感触。胸元から立ち上ってくる彼女の香りのする暖かい空気。本当に気持ちいい。
「本当によく泣くね。俺の制服、そのうち潮がふくんじゃないか?」
「ごめん。」
「本当はさ、一日中こうやって抱き締めてたい。抱き締めて、何度もキスして、ずーっとそうしてたいんだ。。」
「ねえ、今度、俺の部屋に来て。」
「。。。。うん?」
「急がないから。そうだな。春休みか、春の公演が終わったらでもいい。」
「うん。」
「その時、この前の続きをしてもいい?」
「この前って?」
濡れた瞳が俺を見上げた。