坂道では自転車を降りて
 俺の表情をみて、冗談ではないかもしれないと察したらしい。目を白黒させている。変態だと思われちゃったかな。俺だって本当にそんなことができるのか確信はないけど。でも舐めないにしても、いずれ触るだろうことは確かだ。その時、彼女はどんな顔で、どんな声を上げるんだろう。。
「。。。。」
彼女がごくりとつばを飲み込んだ。全身が固まっちゃってる。思わず笑いがこみ上げて来た。

「嘘だよ。そんなことしないよ。ウチには母さんがいるから、もしかしたら何も出来ないかも。でも、部室でしたくらいは、してもいい?」
「う、、ん」
これは、分かってる筈だ。

 あの日、ブラウスの裾から侵入した俺の手は、君の素肌に初めて触れた。寒く乾いた部室のソファ。君の肌はすごく熱くて、そして滑らかで、手に吸い付くようだった。柔らかな胸の感触と、君の鳴く声に理性のタガが外れて、夢中で触りまくって、君を泣かせてしまった。戸惑って泣く顔までもが、愛おしくて、ただ君に触れる事が嬉しくて、君の気持ちを考える余裕があの日の俺には無かった。

 それでも君は俺を許してくれた。また触れても良いと、いや、触れて欲しいと言った。なんてこった。本当に良いのか?
 それに、俺の方だって、引退したら今度は勉強に集中しなきゃいけないんだから、彼女に触ったりなんかしたら、今よりももっとしんどいんじゃないだろうか。

「まあ、その時になってみないと、分からないけどね。」
 あいまいに保険をかけた。まあいいや。約束したんだ。彼女を部屋に呼ぶ。誰にも邪魔されずに、したいだけキスして、抱き締めて、触れ合って。考えただけで、頬が火照る。嬉しくて、たまらない。
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