坂道では自転車を降りて

「でも、さ、最初の話だと、そんなことはしない方がいいんでしょ?」
怖くなったのか、彼女が消極的なことを言い出した。
「そうだけど。」
「私、大丈夫だよ。本当に。一緒に帰れるだけで、十分だよ。」
明らかに逃げ腰だ。でも、いい薬だったかもしれない。
「でも、本当はしたいんだ。俺はね。今すぐだっていいよ。」
俺が笑いながら言うと、彼女も顔を引きつらせて笑った。

「君は?怖くなった?」
いつの間にか緩んでいた腕で、もう一度、彼女を抱きしめる。
「ひゃっ。」
びっくりしたのか、彼女が飛び上がった。ガタガタと震えている。そのまま、ぎゅっと抱き締めると、どうしたらいいのか分からないらしく、ゴソゴソ動いた。
 
「あはは。。。君はもう,本当に、、可愛いというか、憎らしいというか。今日はもう我慢できないや。ごめん。」
 
 僕は彼女を抱き締めたまま、辺りを見回して、高架下へ通じる側道を見つけると、怯える彼女を抱き上げるようにして連れ込んだ。彼女を背中から抱きしめ、前に回した手で彼女のコートのボタンを外す。
 
「やだ、待って。」
待てだって、そんなの無理だろ。
「君が悪いんだぞ。あんな、恥ずかしい事を俺に言わせておいて、触らせないなんてあり得ないだろ。」
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