坂道では自転車を降りて
先輩、それって強姦なんじゃ
 新学期が始まった。新入生歓迎公演は来週だ。俺は2年に進級し5組に振り分けられた。同じクラスに演劇部の原と美波がいた。原は新部長に決定している。主に脚本と演出をやるだろう俺と2人3脚で演劇部を纏める事になるだろう。裏表があり平然と二枚舌を使う。だが、気配りもできる根はいいやつだと思う。美波はありがちな女優志望者のように見える。太めだがダンスが上手い。春の公演では端役ながらも無事役を勝ち取り、役作りに励んでいる。大野多恵は隣のクラスのようだった。

 公演前夜。装置は体育館へ運び込まれ、リハーサルを行い、役者達は解散した。同時公演のブラスバンド部員に体育館で呼び止められ、スケジュールの確認をする。そのまま雑談していたらまた俺だけ遅くなってしまった。

 部室へ戻ろうとすると、部室の前に川村がいた。川村は俺に気づくと、大慌てでこちらへやってきて、小声で言った。

「お前、帰ったんじゃなかったの?今入るのはまずいよ。」
「なんで?」
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