坂道では自転車を降りて
「なんで笑うんだよ。」
「神井先輩って、案外、普通の人なんですね。」
藤沢が涙目で言う。
「どういう意味だよ。」
「いや、もっと何でも我が道を行くのかと。。」
「そうそう。だまって俺について来い的な。」
「そんなことないよ。」
「神井は単に目つきが悪いだけで、女の子に関しては普通の晩生ちゃんだよ。大野さんと喧嘩して、取り乱してるの見たら分かるでしょ?」
「そういえば、そうですね。」
「だからって、俺に聞きます?」
「いや、単にお前らに相談に乗って欲しいだけなんだけど。」
悔しいけど、俺よりもこいつらの方が、一緒にいる時間も、付き合いも長い。
「神井先輩が椎名に相談って、すごい展開だな。」
「だったらパンティー。」
椎名は挑発的に言う。パンティーって、オヤジかよ。
「それは、無理だよ。」
ここは下手に出よう。
「パンツなら、サイズも大まかだし、この時期なら、お菓子売り場でも売ってますよ。」
「お前ら、多恵の反応が見たいだけだろ。」
「まあ、そうですね。」
椎名は平然と言った。こんな会話、彼女が聞いたらどう思うだろう。
「『明日、つけて来て。』とか、言いながら渡して、」
「『今日履いてる?』って聞いてみてくださいよ。俺達の前で。」
皆が爆笑する。
「そっそんなこと、できるわけ、なっななっ。」
こんな冗談、無言でスルーすれば良かったのに、あまりの内容に、うろたえて答えてしまった。だめだ。完全にからかわれている。