坂道では自転車を降りて
「大野さんを苛めてるのは椎名達ですよ。」
清水先輩と話していた原が横から答える。
「何っ、そっちか。お前ら、俺の多恵を苛めるとは、いい度胸だ。」
鈴木先輩はのっしのっしと歩いて行くと、椎名の頭をグリグリやり始めた。ああ、俺もあんな風にできたら、彼女ももっとやりやすかったかもしれない。でも、俺と先輩ではなにもかもが違いすぎる。
ほんわかした空気を残して、先輩達は帰って行った。本当にカッコいいなぁ。多恵はどうして鈴木先輩じゃなくて、俺の彼女になってくれたんだろう。
ふと、鈴木先輩が戻って来た。
「神井ちょっと。」
「はい。」
体育館の外に呼び出される。
「川村は、結局どうなったのか、お前知ってる?」
「クリスマス公演で辞めましたよ。知らなかったですか?」
「辞めた事は知ってる。何があったか知ってるか?多恵に聞いても良いんだが、、お前が知ってたらと思って。」
「。。。大野さんに告白って、断られました。」
「そうか。ちゃんと告って、ちゃんとフラレたのか。」
「はい。」
「ならいい。ちゃんと前向けたかな。」
「分かりませんが、、やたら勉強してるみたいです。学年末テストの成績もすごかったし。先輩は、なんでそんなに川村を気にするんですか?俺じゃあダメですか?」
「いや、清水に聞いたんだけど、俺も随分あいつに尻拭いてもらってたみたいなんだ。あいつ何も言わずに、健気に多恵のことずっと見ててくれてて、可哀想なことした。もっと早く俺がなんとかしてやればよかった。」
「。。。。。そしたら、俺どうなってたんですかね?」
「そりゃあ、多分、」
先輩はそこまで言ってちょっと言いよどんだが、続けた。
「振られてただろうな。いや、川村と上手くいったとも限らないけど。」
「。。。。。ですね。」