坂道では自転車を降りて
「。。。。。俺も、もう少ししたら、帰るよ。」
「一緒に、帰りませんか?」
生駒さんの言葉に、面食らってしまった。一緒にって帰る方向同じだったっけ?
「じゃあ。。門まで送るよ。」
1人では帰りにくそうにしていたので、生駒さんを門まで送ることになった。
「すみません。私のせいで。」
歩きながら話す。俺に言われても。
「事故だ。仕方ない。なんとか間に合いそうだし、よかったよ。もう気にするな。」
彼女も少しエキセントリックな性格で、周囲から浮いた感じがある。誰にも慰めて貰えなかったのかもしれない。だが、こーゆーのは原の管轄の筈だ。
「大野先輩、頑張ってましたね。」
「うん。あいつすごいな。俺は、まだ帰れないよ。分かるだろ?」
男ばかりの中で、1人くるくると動き回って指示を出して。
「分かりますけど。」
「君は早く帰って、ちゃんと寝るように。」
「大野先輩、なんか、ズルい。」
彼女の言いたい事はなんとなく分かった。けれど、それは多恵がズルいからではない。
「先輩。」
彼女は立ち止まった。そして俺の目を見て、何か言おうとした。俺の勘違いだといいんだけど。。
「引退しても、ときどき、昼休みとか、来てくれますよね。私の本、みてくれるんですよね?」
「。。。。うん。」
「私っ。」
彼女が一歩前へ出た。
「分かった。本は見てやる。」
俺はあわてて彼女の言葉を遮った。
「言わせても貰えないんですか?」
「ごめん。俺、戻る。」