坂道では自転車を降りて
「ぎゅってして。ちょっとだけでいいの。」
「うん。」
俺達は少しの間、抱き合った。彼女は深く息を吐いて、体中の力を抜いて俺にもたれかかった。こんな風に甘えてくれる彼女が、嬉しくて、可愛くて。。こんなに素敵な、こんなに可愛い娘が、俺に、俺だけに甘えてくれる。嬉しくて叫びだしたいくらいだった。
ちょうど一年前のリハの日だ。先輩が彼女に告白するのを立ち聞きした。あの時には、まだ彼女が好きだという自覚はなかった。ただ、無性に気になって。でも、今思えば、図書室に通っていたのは彼女に会う為だったのかもしれない。
「明日で終わりだね。」
「うん。明日だ。」
俺達の引退公演。