坂道では自転車を降りて
がっかりさせてごめんなさい

 朝早めに登校し、授業の前に部室へ行くと、中から織田の声が聞こえた。
「これ、川村先輩ですか?」
「うん。」
 ラッカーのことだろう。聞かなきゃ良かった。ドアの前で立ち止まる。ピシャリと戸が開く音がする。

「間に合ってよかったです。先輩本当にすごいです。本棚も俺達だけじゃあできなかった。」
「一年後には織田くんのほうが、もっとできるようになってると思うよ。真面目にやればね。笑。」
彼女の後継者は織田か。
「一年間、ありがとうございました。楽しかったです。」
椎名の声だ。椎名もいたのか。
「うん。私もありがとう。」
「俺、大野先輩が好きです。」

 はっきりと堂々とした声だった。中には織田もいる筈だが、今が最後のチャンスだと思ったのだろう。玉砕覚悟の告白はいつものふざけた椎名ではなかった。

「ああ、よかった。本当にありがとう。」
よかった?ありがとう?何が??
「。。。。。」
「椎名くんいつもふざけて変な事ばかり言うし、最近、ちょっとキツかったから、嫌われたかと思ってた。よかった。私も椎名くんが大好きだよ。本当はすごい努力家だよね。いつも感心してたよ。これからも頑張ってみんなを引っ張ってくれる?」
 これは、スルーしたと言うよりは、多分、わかってないな。自業自得とはいえ、椎名、可哀想。

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