坂道では自転車を降りて
あぁ、こんな時間が永遠に続けば良いのに。電車が止まってしまえば良いのに。次はいつ、一緒に帰れるのかな。あと何回、こんなドキドキする時間を過ごせるんだろう。そんなことを考えるのは、大抵、後からで、その時はもう何もかもが真っ白で、ただ彼女の躯の感触と、車窓に写った俺達、自分の鼓動だけがうるさくて。。。
あっという間に電車はホームに滑り込んだ。車窓の2人が消えて行く。俯いていた彼女が俺から身体を離した。腕を握る手だけはそのままに。強く握る手に、何か違和感を感じて顔を見る。光線の加減だろうか、やけに顔が青白い。
「なんか、顔色が悪いような。大丈夫?」
「うん。ちょっと。貧血だと思う。」
「え、、とにかく、降りよう。」
彼女の肩を抱き、人の流れに乗って降車する。「足下、気をつけて。」降りたところの正面にベンチがあったので彼女を座らせた。
「ごめん。もしかして、調子悪かったの?」
言ってくれたら、もっと早く切り上げたのに。
「大丈夫。すぐ治るよ。ちょっと冷えたから。」
春のバーガーショップは顔ばかり暑くて足下が寒かった。
「せめて先に帰ってもらえば良かった。無理させてごめん。」
「私も楽しかったから、ちょっと調子にのりすぎた。」
「そうだよな。疲れてたよな。気が付かなくて、ごめん。やばいな。風邪かな。部室で寝たのがまずかったんじゃない?」
「ちがうよ。大丈夫だよ。」
「ねぇ、前もここで休憩してたら、一緒にいてくれたね。」
「ああ、そうだな。」
君は、バスで田崎の話をしてた。